賞与でメリハリをつけたのに、社員の反応が薄いのはなぜか|「固定」と「評価で動く分」に分けて確かめる方法
この夏も、賞与についてのご相談が続きました。なかでも何度か聞いたのが、こんな声です。
「評価をして、ちゃんとメリハリをつけている。それなのに、社員の反応が薄い」
経営者の側では、しっかり差をつけたつもりでいる。でも社員の側は「評価されても、そんなに変わらないな」と感じている。この食い違いは、けっこうよく起きます。
そして厄介なことに、どちらも嘘をついていません。
この記事では、そのズレがどこで起きているのかを、直近の賞与を分解しながら確かめる方法を紹介します。冬の賞与を決める前に、一度試してみてください。
賞与は、性格の違う2つのお金でできている
多くの会社の賞与は、性格の違う2つのお金が合わさってできています。
- 固定の部分:基本給に月数を掛けて出す部分(例:基本給×1.6か月)
- 評価で動く部分:評価の結果に応じて増えたり減ったりする部分
先日うかがった会社は、この比率が固定8割、評価で動く部分2割でした。めずらしい形ではありません。中小企業では、よくある配分だと思います。
経営者が「メリハリをつけた」と言うとき、頭にあるのは後者の「評価で動く部分」です。一方、社員が受け取るのは、2つを足した総額です。ズレの多くは、ここから生まれます。
直近の賞与を、4列で並べてみる
まずは、直近の賞与を次の4列で並べてみてください。
名前/基本給/固定の部分/評価で動いた部分
社員が10人でも20人でも、給与ソフトから出した明細があれば、30分ほどでできます。
たとえば、賞与の総額を「基本給の2か月分」とし、そのうち8割(1.6か月分)を固定、2割(0.4か月分)を評価で動かしている会社なら、次のような表になります。評価で動く部分は、基本給×0.4か月に評価の係数(S=1.5、A=1.2、B=1.0、C=0.8)を掛けて出しています。
| 社員 | 基本給 | 評価 | 固定の部分 | 評価で動いた部分 | 賞与の合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん(ベテラン) | 32万円 | B | 51.2万円 | 12.8万円 | 64.0万円 |
| Bさん(中堅) | 28万円 | A | 44.8万円 | 13.4万円 | 58.2万円 |
| Cさん(若手) | 22万円 | S | 35.2万円 | 13.2万円 | 48.4万円 |
| Dさん(中堅) | 26万円 | B | 41.6万円 | 10.4万円 | 52.0万円 |
| Eさん(ベテラン) | 30万円 | C | 48.0万円 | 9.6万円 | 57.6万円 |
※数字は説明のためのモデルです。
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表ができたら、評価が一番高かった人と、一番低かった人の「評価で動いた部分」だけを比べます。
上の例では、S評価のCさんが13.2万円、C評価のEさんが9.6万円。その差は3.6万円です。
経営者としては、評価会議で悩み抜いて、SとCという大きな差をつけたつもりです。ところが、お金にすると3.6万円。賞与の総額が基本給の2か月分でも、評価で動く原資は0.4か月分しかないので、そこにきちんと差をつけても、出てくる金額の差は数万円にとどまります。
評価の高い若手より、評価が普通のベテランのほうが多くなる
もう1つ、表を見ると気づくことがあります。賞与の合計で並べると、こうなります。
- S評価の若手・Cさん:48.4万円
- C評価のベテラン・Eさん:57.6万円
一番評価の高い人が、一番評価の低い人より約9万円少ないのです。
理由は、固定の部分が基本給に比例しているからです。基本給は、たいてい勤めた年数で積み上がっています。すると、評価の差よりも基本給の差のほうが、賞与の総額に大きく効いてしまいます。
計算は、まったく正しいのです。それでも、受け取る側には「結局、年数なんだな」と映ってしまう。これが「反応が薄い」の正体であることが少なくありません。
差が小さいことが、悪いわけではありません
ここで「では、もっと差をつけましょう」とは言いません。賞与へのスタンスは、会社によって違っていいからです。
- 賞与は全員で分け合うもの:差は抑えて、一体感を守る
- 賞与は成果の反映:成果を出した人とそうでない人で、はっきり差がつく
どちらも間違っていません。その会社のカラーであり、経営者の考え方そのものです。
問題なのは、どちらのつもりなのかが決まらないまま、昔からの計算式だけが動き続けている状態です。経営者は成果を反映しているつもり。でも実際に出ている数字は、ほぼ横並び。そのズレが「反応が薄い」という形で返ってきます。
確かめるのは、この順番で
- 4列の表をつくり、評価が一番高い人と一番低い人の「評価で動いた部分」の差額を出す
- その差が、自分が意図した差かどうかを見る
- 会社のスタンスを決めて、言葉にする
もし一体感を大事にするスタンスなら、それを言葉にして社員に伝えたほうがいいかもしれません。
「うちは賞与で大きな差はつけません。その代わり、差は昇給と役割でつけます」
そう言い切れるだけで、同じ金額でも受け取り方は変わります。
反対に、成果を反映したいスタンスなら、評価で動く幅が、社員が実感できる大きさになっているかを見直すことになります。固定と評価の比率を少しずつ動かす、固定の部分を基本給の月数ではなく役割(等級)ごとの金額にする、といった方法があります。
どちらにしても、最初にやることは同じです。今の賞与が、どちらのことを語っているのかを知ることです。
冬の賞与を決める前に、確かめたい3つのこと
- 評価で動く部分は、賞与全体の何割か:固定と評価の比率を、数字で言えるか
- 一番高い評価と一番低い評価で、いくら違うか:その差額を見て、社長自身が「意図どおり」と思えるか
- 会社のスタンスを、一言で説明できるか:「全員で分け合う」のか「成果を反映する」のか
3つ目に答えられれば、賞与の説明会や面談で話すことも自然に決まります。
よくある質問
Q. 評価で動く部分は、賞与の何割くらいにするのがよいですか?
A. 決まった正解はありません。「全員で分け合う」スタンスなら小さく、「成果を反映する」スタンスなら大きくなります。いきなり大きく変えると社員が不安になるため、変える場合は2〜3回の賞与をかけて段階的に動かすのがおすすめです。
Q. 差を大きくすると、社員が不安になりませんか?
A. 不安の多くは「どう決まるのかが見えない」ことから生まれます。栃木県の住宅設備サービスの会社(約60名)では、「原資は会社の利益で、配分は評価のポイントで」決めるルールにし、決まり方を全員に見えるようにしたことで、前年並みから業績で変わる仕組みへの切り替えが受け入れられました。
Q. 固定の部分が年数で積み上がった基本給に引っぱられるのは、どうすれば防げますか?
A. 固定の部分を「基本給×月数」ではなく、役割(等級)ごとの金額にする方法があります。こうすると、勤めた年数よりも、今担っている役割が賞与に反映されやすくなります。
まとめ:賞与は、渡した瞬間にメッセージになる
賞与は、渡した瞬間に社員へのメッセージになります。そのメッセージが、経営者の考えているものと同じかどうか。
分解してみると、意図していたつもりのことが、数字には出ていなかったということがよくあります。社長の頭の中には基準があっても、表にしないと見えないものです。
「うちはどうなっているだろう」と感じた方は、冬の賞与を決める前に、直近の賞与を一度分解してみてはいかがでしょうか。
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