業績が悪い年の賞与、どう減らしてどう伝える?|中小企業の社長が押さえたい3つの手順と伝え方の文例
結論:賞与を減らすときに社員の信頼を失うかどうかは、減らした額よりも「決まり方」と「伝える順番」で決まります。 ①賃金規程で減らせるかを確かめ、②減らす幅を利益から出し、③役員・管理職から順に、数字と次の見通しを添えて伝える。この3つを押さえれば、厳しい年でも社員は離れにくくなります。
「今年は業績が厳しい。冬の賞与を例年どおりには出せない」
秋になると、社長からこうしたご相談をいただきます。出せないものは出せない。ただ、どう減らし、どう伝えるかを間違えると、賞与の額以上のものを失います。いちばん怖いのは、「会社は何も説明してくれない」と感じた中堅社員が、静かに転職活動を始めることです。
この記事では、業績が悪い年の賞与の減らし方と伝え方を、3つの手順で紹介します。
手順1:減らせるかどうかを、賃金規程で確かめる
最初に確かめたいのは、そもそも賞与を減らせるのかです。これは、就業規則や賃金規程に、賞与がどう書かれているかで決まります。
| 規程の書き方 | 減らせるか |
|---|---|
| 「会社の業績や本人の評価などを考えて支給する。業績によっては支給しないことがある」 | 会社の判断で減らせる |
| 「基本給の2か月分を支給する」と額や月数が決まっている | そのままでは減らせない。社員の同意や規程の見直しが必要 |
| 規程にはっきり書いていないが、何年も同じ月数を払ってきた | 注意が必要。毎年の支払いが「約束」とみなされることがある |
多くの中小企業の規程は、1つ目の書き方になっています。ただ、ひな形のまま何年も見直していない会社や、求人票に「賞与年2回・計4か月分」と書いている会社もあります。減らすと決める前に、規程と求人票・雇用契約書の書き方を一度確かめておきましょう。判断に迷うときは、顧問の社会保険労務士さんに確認するのが安心です。
手順2:減らす幅を、利益から出す
次に、いくら減らすかを決めます。ここで「去年の半分」のように感覚で決めると、社員に理由を説明できません。
減らす幅も、賞与原資の上限の出し方と同じ考え方で決めます。
- 賞与前の利益の見込み − 会社に残したい利益 = 賞与に回せるお金(法定福利費込み)
- 賞与に回せるお金 ÷ 1.15 = 今期の賞与原資の上限
たとえば、例年は冬に月給の1か月分を出してきた社員20名(月給の合計560万円)の会社で、利益の見込みが下がり、冬に回せるお金が法定福利費込みで約450万円になったとします。450万円 ÷ 1.15 = 約390万円。月給の合計で割ると、およそ0.7か月分が冬の上限です。
| 項目 | 例年 | 今年 |
|---|---|---|
| 冬の賞与原資 | 約560万円(1.0か月分) | 約390万円(0.7か月分) |
| 社員1人あたりの平均 | 約28万円 | 約19.6万円 |
※数字は説明のためのモデルです。
このように「会社が出せる上限はここまで」と数字で示せる状態にしておくことが、あとで伝えるときの土台になります。
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減らし方は、4つの中から選ぶ
減らす幅が決まったら、どう減らすかを選びます。
| 減らし方 | 中身 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| ① 全員一律に月数を下げる | 全員1.0か月→0.7か月 | 説明をシンプルにしたい会社 |
| ② 固定の部分を下げ、評価で動く部分は残す | がんばった人の差は守る | 評価制度が回っている会社 |
| ③ 役員・管理職から先に減らす | 上の層の減額幅を大きくする | 「上が先に痛みを負う」姿勢を見せたい会社 |
| ④ 冬は控えめにし、期末に業績が戻れば決算賞与で上乗せ | 条件つきで追加を約束する | 下期に回復の見込みがある会社 |
おすすめは、②と③の組み合わせです。評価の差を残すことで「がんばった人が報われない」不満を防ぎ、役員・管理職が先に負担を引き受けることで、減額に納得してもらいやすくなります。
④を選ぶ場合は、「期末の経常利益が○○万円を超えたら、決算賞与として上乗せする」のように、条件を数字で示すことが大切です。あいまいな約束は、守れなかったときに大きな不信につながります。
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減額の伝え方で一番大事なのは、順番です。
- 役員・管理職に先に伝える:会社の数字と減額の理由を説明し、部下から質問されたときに同じ答えができるようにしておく
- 全社員に、社長から直接伝える:朝礼や全体会議の場で、会社全体の方針として伝える
- 一人ひとりに、明細を渡す前に伝える:評価の結果と金額を、上司から個別に伝える
いちばん避けたいのは、明細を見て初めて減額を知ることです。社員から見ると「何の説明もなく減らされた」になり、その後にどれだけ丁寧に説明しても、受け止め方は変わりません。
全社員に伝えるときの4つの中身
全体に伝えるときは、次の4つをそろえます。
- 会社の数字:売上と利益が、どのくらい厳しいのか(細かい決算の数字でなく、大まかでよい)
- 今回の賞与と、その決め方:「会社が出せる上限がここまでだったので、この額にした」
- 会社がやること:役員報酬を下げる、取引先との値決めを見直す、など
- 次の見通し:「業績がこうなれば、こう戻す」という条件
話し方の文例
「今年は原材料の値上がりが続き、利益が昨年の半分ほどになる見込みです。会社を続けるために残さなければならないお金を確保した結果、冬の賞与は例年の1か月分に対して、0.7か月分にさせてください。
私を含めた役員の報酬は、この冬から下げています。評価で差がつく部分は例年どおり残しました。がんばってくれた人の分は、守ります。
期末の利益が見込みを上回れば、決算のときに上乗せします。その条件も、決まりしだい皆さんにお伝えします」
ポイントは、「申し訳ない」で終わらせず、数字と、会社がやることと、次の見通しまで言い切ることです。
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やってはいけない3つのこと
1. 理由を言わずに、明細だけで知らせる
前述のとおり、もっとも信頼を失うやり方です。説明の時間がとれないときでも、最低限、全体への一言は先に伝えましょう。
2. 人によって説明が違う
社長は「業績が理由」と言い、ある管理職は「本社の方針で」と言う。説明がばらばらだと、社員は「本当の理由が隠されている」と感じます。だからこそ、管理職に先に伝え、同じ説明ができるようにしておくことが欠かせません。
3. 全員を同じだけ減らして、評価の差をなくす
厳しい年ほど、がんばった人の差を消してしまうと、その人たちから先に辞めていきます。全体の額を下げても、評価で動く部分は守るのが原則です。
よくある質問
Q. 賞与をゼロにしてもよいですか?
A. 規程で「業績によっては支給しないことがある」と定めていれば可能です。ただ、ゼロにすると社員の不安は一気に大きくなります。寸志程度でも出し、理由と次の見通しを伝える会社が多いです。
Q. 管理職だけ減額幅を大きくしても問題ありませんか?
A. 規程の範囲内であれば、役割や責任に応じて減額幅を変えることはできます。その場合も、「なぜ管理職の減額幅が大きいのか」を管理職本人に先に説明しておくことが大切です。
Q. 減額すると、社員が辞めてしまわないか心配です。
A. 辞める理由になりやすいのは、額そのものより「説明がない」「先が見えない」ことです。数字と次の見通しを伝え、評価で動く部分を残すことで、離職のリスクは下げられます。
Q. 夏の賞与で戻すと約束してもよいですか?
A. 業績がわからないまま「必ず戻す」と約束するのは避けましょう。約束するなら、「期末の利益が○○万円を超えたら」のように、条件を数字で示す形にします。
まとめ:厳しい年こそ、決まり方を見せる
業績が悪い年の賞与は、次の3つの手順で決めて伝えます。
- 手順1:賃金規程で、減らせるかを確かめる
- 手順2:減らす幅を、利益から出す
- 手順3:役員・管理職→全社員→一人ひとりの順で、数字と次の見通しを添えて伝える
賞与は、渡した瞬間に社員へのメッセージになります。厳しい年に「決まり方」をきちんと見せた会社は、業績が戻ったときに、社員との信頼がむしろ深まっています。
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