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ベテラン社員が辞める会社の給与に共通すること|新人と給料が変わらない問題と、中小企業の社長が打てる手

    
工場で書類を見ながら話す作業着の社員
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ベテラン社員が辞める会社の給与に共通すること|新人と給料が変わらない問題...

結論:ベテラン社員が辞める会社では、給与の面で3つのことが重なっていることが多くあります。①新人との給料の差が縮んでいる、②この先、給料が上がる先が見えない、③身につけた技術や経験が給料に表れていない。 ベテランは不満を口にしないまま、ある日、同業他社に移ります。まずは勤続年数ごとに給料を並べて、差がどう縮んできたかを確かめることから始めてください。

「まさか、あの人が辞めるとは思わなかった」

勤続10年を超えるベテランから退職を告げられたとき、多くの社長がこう口にします。若手が辞めるのには慣れていても、現場を長く支えてきた人が抜けるのは、こたえます。仕事の段取り、お客様との関係、後輩への教え方。ベテランが持っているものは、すぐには代わりがききません。

この記事では、ベテラン社員が辞める会社に共通する給与の問題と、社長が今からできる手を紹介します。

支援先で起きていたこと

設備工事の会社で、勤続11年の現場社員から退職の申し出がありました。

話を聞くと、この会社では前の年にも2人が退職し、2人とも同業他社に移っていたことが分かりました。現場で経験を積んだ人ほど、同じ業界の会社からは即戦力として歓迎されます。辞める側にとっては、仕事の中身はほとんど変わらないまま、職場だけを変える選択です。

この会社では、役員が実質2人で現場と経営の両方を引っぱっていて、負担が大きくなっていました。そこで話し合ったのが、社員の中から役員を登用して、経営の層を厚くすることです。長く勤めてきた人にとっては、「この会社で、この先どうなれるか」が見えることにもつながります。

同業他社に移るベテランは、給料の額だけで動くわけではありません。ただ、「ここにいても、この先が変わらない」と感じたとき、同じ仕事でよりよい条件を出す会社に気持ちが傾きます。

ベテランが辞める会社の給与に共通する3つのこと

1. 新人との給料の差が縮んでいる

最低賃金や初任給は、ここ数年、毎年大きく上がっています。新人の給料を上げるのに精一杯で、ベテランの給料は据え置き。そんな年が何年か続くと、入ったばかりの新人と、10年以上働いてきたベテランの給料が、ほとんど変わらなくなります。

ベテラン本人は、自分の給料を新人と比べて口にすることはあまりありません。でも、気づいています。「自分の10年は、給料にすると月2万円か」と。

2. この先、給料が上がる先が見えない

多くの中小企業では、ある程度の年数を超えると、昇給が小さくなったり止まったりします。役職のポストは限られていて、管理職にならない人の給料は頭打ちになりがちです。

この先も給料がほとんど変わらないと分かっているのは、ベテランにとって、今の額が低いこと以上に重い問題です。

3. 経験や技術が給料に表れていない

難しい仕事を任されている、後輩に教えている、お客様から指名される。こうした経験や技術が、給料の決まり方に入っていない会社は少なくありません。年齢や勤続年数で決まる部分と、社長の感覚で決まる部分だけでは、「できる人」と「長くいるだけの人」の差が給料に出ません。

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並べて確かめる:勤続年数ごとの給料の表

まずやってほしいのは、正社員の月給(基本給と毎月決まって払う手当)を、勤続年数の順に並べてみることです。

社員勤続担っている仕事月給
Aさん1年目担当作業21万0,000円
Bさん3年目担当作業22万0,000円
Cさん6年目現場のまとめ役23万5,000円
Dさん12年目現場のまとめ役・後輩の指導・難しい作業24万5,000円

※数字は説明のためのモデルです

この並びで見てほしいのは、次の3点です。

  • 1年目と12年目の差:3万5,000円。11年分の経験と、任されている仕事の重さに見合っているか
  • 毎年の差の縮み方:新人の給料を毎年上げていれば、この差は年々小さくなっている
  • 仕事が重い人ほど、給料も上がっているか:Dさんは指導や難しい作業まで担っているのに、Cさんとの差は1万円

この表を見て「Dさんが辞めても、おかしくない」と感じたら、手を打つ時期です。最低賃金が上がるたびに新人と先輩の差が縮む仕組みと、その守り方は、こちらの記事で詳しく書いています。

関連記事最低賃金が上がるたび、新人と先輩の給料が同じに近づく|中小企業の給与表で「差」を守る3本の線最低賃金が上がるたびに縮む先輩との差を、給与表の3本の線で守る

社長が打てる3つの手

1. 新人と先輩の「差の線」を決めておく

新人の給料を上げるとき、先輩をいくら上げるかを、その年ごとに考えるのはやめます。代わりに、「勤続3年以上の人と新人の差は、最低でも○万円残す」という線を先に決めます。新人を上げたら、線を割った先輩も自動的に上げる。これだけで、差が知らないうちに消えることはなくなります。

2. 管理職にならなくても上がる段階をつくる

ベテランの全員が管理職に向いているわけではありません。現場の技術を極めたい人には、技術の段階(一人前・指導できる・難しい仕事を任せられる、など)で給料が上がる道を用意します。上がる先が見えるだけで、「ここにいても変わらない」という気持ちは和らぎます。

3. 同業他社の経験者の給料を一度調べる

ベテランが移る先は、多くの場合、同業他社です。ハローワークや求人サイトで、同じ地域・同じ職種の「経験者」の求人を何件か見てみてください。自社のベテランの給料が、経験者募集の金額より明らかに低いなら、それは引き抜かれる理由になります。

ベテランに辞められると、いくら失うか

ベテランが1人辞めると、失うのは1人分の人件費だけではありません。

失うもの中身
採用の費用紹介会社に頼めば1人100万円前後
育てる時間一人前になるまでの数年分、先輩が教える時間
仕事の質段取り・品質・お客様との関係の一部
ほかの社員への影響「あの人が辞めるなら」と続く退職

ベテラン1人の月給を2万円上げると、会社の負担は社会保険料や賞与への影響を含めて年およそ30万円前後です。辞められたときに失うものと比べて、どちらが重いかを考えてみてください。

よくある質問

Q. ベテランの給料を上げると、人件費が大きく増えます。
A. 全員を一律に上げる必要はありません。まずは勤続年数ごとに並べて、差が縮みすぎている人、仕事の重さに対して低すぎる人から見直します。対象を絞れば、負担は思っているより小さく済むことが多いです。

Q. 本人から不満を言われたことはありません。
A. ベテランほど、給料の不満を口にしません。言わないまま、ある日辞めると告げるのが一番多い形です。言われていないことは、満足している証拠にはなりません。

Q. 年齢が高いベテランの給料を、これ以上上げるべきか迷います。
A. 年齢ではなく、任せている仕事で考えます。今も現場の中心で、後輩を育て、難しい仕事を担っているなら、それに見合う給料を払う理由があります。逆に、担っている仕事が軽くなっているなら、役割と給料の両方を本人と話し合う時期かもしれません。

Q. 退職を申し出たベテランを引き止めるために、給料を上げるべきですか?
A. その場で上げるのは慎重に考えたほうがよいと考えています。理由と答え方は、こちらの記事にまとめています。

関連記事「給料を上げてくれないと辞める」と言われたら|中小企業の社長がその場で決めてはいけない理由と、答え方その場で上げてはいけない理由と、根拠をもった答え方

まとめ:ベテランは黙って辞める。だから、先に並べて確かめる

  • ベテランが辞める会社では、①新人との差が縮む、②上がる先が見えない、③経験が給料に表れない、の3つが重なりやすい
  • まず、勤続年数ごとに月給を並べて、差の縮み方と仕事の重さを確かめる
  • 打てる手は、①差の線を決める、②管理職にならなくても上がる段階をつくる、③同業他社の経験者の給料を調べる
  • ベテラン1人に辞められたときの損失は、給料を少し上げる費用よりずっと大きい

社員が辞めていく理由を、給与の面からまとめた記事もあります。

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