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オールマイティな管理職に頼るほど、組織が育たない理由

    
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オールマイティな管理職に頼るほど、組織が育たない理由

「うちの課長、ほんとうになんでもできるんですよ」

そう話す経営者の表情は、誇らしいような、困っているような、不思議な色合いをしていることがあります。

社員数35名ほどの建設会社での話です。20年以上勤めている課長がいて、営業から現場管理、採用の面接まで、何でもこなしてきた。経営者からすれば「会社を支えてくれた柱」と言える存在です。

ただ、ここ数年で社員が増え、新しいメンバーが入ってくると、少し様子が変わってきた。その課長が動かないと物事が進まない。若い社員が自分で判断する前に、まず課長に聞きに行く。

「なんでもできる課長」に、会社全体が依存している状態になっていたのです。

確かに、なんでもこなせる管理職は頼もしい存在です。でも、それが組織の成長を止めているかもしれない、という話をさせてください。

「なんでもできる課長」はいつ生まれるのか

会社が小さいころ、管理職には幅広い役割が求められます。

営業もやりながら、現場も見て、部下の指導もして、経営者の相談相手にもなる。

そういう環境で鍛えられた課長は、気がつけば「何でも屋」になっています。

それは決して悪いことではありません。その時代に必要な形だったからです。

人が増えると、話が変わる

人が増えてくると、組織のあり方が変わります。

一人の管理職がカバーできる範囲には限界があります。それでも「あの課長に聞けば何とかなる」という文化が残っていると、どうなるか。

その課長に仕事が集中する。
他の社員が自分で考えなくなる。
課長が動けなければ、組織が止まる。

これが、オールマイティな管理職に頼りすぎる組織の典型的なパターンです。

「あの人がいないと回らない」という状態のリスク

もう一つ、見落とされがちな問題があります。

その課長が、突然休んだら。病気になったら。退職を申し出たら。

「あの人がいないと回らない」という組織は、その人一人のリスクを丸ごと抱えていることになります。

経営者がなんとなく感じている「あの課長に頼りすぎているかも」という感覚は、多くの場合、正しいかもしれません。

多くの会社が取りがちな対応

こういう状態に気づいたとき、多くの経営者は「もっと任せればいい」と課長に声をかけます。

「部下に権限を渡してほしい」「自分がいなくても回るようにしてほしい」

その言葉は正しい。でも、課長の側からすると、なかなか動けないことがあります。

何を、どこまで、誰に渡せばいいのかがわからない。
渡した後に問題が起きたとき、誰が責任を取るのかが不明確。
そもそも、任せられるほどに育った部下がいない。

「任せなさい」という言葉だけでは、現場は変わりにくいのです。

もう一つ、よく見られるパターンがあります。

なんでもできる課長が忙しそうにしているのを見て、経営者がさらに新しい仕事を振ってしまう。「この人に頼めば確実だから」という安心感が、そうさせる。

その課長も、断れない。期待に応えたい。結果、仕事は増え続ける。

「頼もしい人ほど、仕事が集まりすぎる」という状況は、こうして作られていきます。本人の消耗に気づいたときには、もう手遅れということも少なくありません。

「任せられない課長」には、理由がある

オールマイティな管理職が仕事を手放せないのは、怠慢ではありません。

多くの場合、「任せ方がわからない」「任せると不安」「自分がやったほうが早い」という感覚から来ています。

向き不向きの問題もある

管理職の中には、マネジメントよりもプレイヤーとして動くほうが得意な人がいます。

でも、昇格してしまったからには管理職の立場でいなければならない。

プレイヤーとして優秀だった人が、マネジメントの場面では力を発揮しにくい…

そういうケースは、現場でよく見かけます。

これは本人の問題というより、役割の設計や配置の問題かもしれません。

向き不向きを整理せずに「昇格させる」という判断だけが先に進んでしまうと、その後の育て方も、本人の動き方も、どこかかみ合いにくくなります。

「任せる先」がないことも多い

もう一つ見落とされがちなのは、課長が仕事を渡せる相手がいない、という状況です。

「任せたいけど、任せられるほどの人が育っていない」

「任せた後のフォローをする余裕がない」

こうなると、結局課長が抱え込むしかなくなります。

課長を責めるより先に、渡せる環境が整っているかを見直す必要があるかもしれません。

役割を絞ることが、組織の成長につながる

では、どうすればいいのか。

一つの方向性として、管理職の役割を意図的に絞ることが挙げられます。

「この課長には、営業の管理だけに集中してもらう」
「現場の技術判断は、この人に任せる」

このように役割を分担することで、それぞれの管理職が自分の強みを発揮しやすくなります。

「向き不向き」を組織設計に活かす

全員がオールマイティである必要はありません。

得意なことが違う人が集まって、お互いを補い合う。

それが組織の強さになるはずです。

マネジメントが得意な人、現場の技術に強い人、対外的な折衝が得意な人。

それぞれの強みを活かせる役割を設計することが、組織を育てる第一歩かもしれません。

課長が「任せる練習」をする場を作る

役割を絞るだけでなく、管理職が部下に任せる経験を積める環境を作ることも大切です。

最初は小さな仕事から任せてみる。
うまくいかなくても、フォローできる体制を整えておく。
任せた結果を振り返る場を定期的に持つ。

こういったことを積み重ねることで、「任せる文化」が育っていきます。

任せることに慣れていない課長が、いきなり大きな仕事を手放すのは難しい。だから、最初の「任せる」は本当に小さな一歩でいい。その経験が、少しずつ課長の行動を変えていきます。

頼もしい課長を、もっと活かすために

オールマイティな管理職は、会社の大切な財産です。

でも、その人一人に頼り続けることは、その人にとっても、組織にとっても、長続きしないかもしれません。

「あの課長がいなくなったら、どうなるんだろう」

そういう不安を感じているなら、今が役割を見直すタイミングかもしれません。

今の御社の課長は、自分の役割の範囲を自分で理解できているでしょうか。
そして、その範囲の中で、部下に渡せている仕事はあるでしょうか。

「あの課長に頼めば大丈夫」という安心感が、実は組織の成長を止めているかもしれない。

そう気づいたとき、最初にやることは課長を責めることではありません。役割を整理して、渡せる環境を作ることです。

頼もしい課長ほど、きちんと役割を定義されたときに力を発揮します。会社が大きくなるタイミングで、管理職の在り方を一緒に考え直してみることをおすすめします。

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