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評価シートを渡しただけでは、管理者は「評価できる人」にはならないかもしれない

  
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評価シートを渡しただけでは、管理者は「評価できる人」にはならないかもしれ...

「評価シートは完成しました。でも、管理者が一人で評価できるかというと、正直まだ難しくて…」

こういう言葉を、現場でよく聞きます。

制度を整えることに力を注いだ。評価シートも作った。それでも、いざ運用しようとすると、管理者が「どうやって使えばいいかわからない」という状態になっている。

これは、管理者の能力の問題ではないかもしれません。

むしろ、制度を「作ること」と、管理者が「使えるようになること」が、別のプロセスであることに気づかないまま進んでしまっていることの方が、問題の本質に近いように思います。

制度は完成した、でも誰も使い方を知らない

人事制度の整備を進めると、最初にこの壁にぶつかることがあります。

評価シートやスキルシートは、一見すると「これを見ながら評価してください」と渡せば使えそうに見えます。でも実際には、評価という行為には、紙に書けないたくさんのことが含まれています。

「この行動は、評価基準の3に相当するのか、それとも4なのか」 「部下を観察するとき、何をどういう目で見ればいいのか」 「自分の感情や好き嫌いを、できるだけ判断に混ぜないようにするには」

こういった問いへの答えは、シートには書いていません。管理者は、誰にも教わらないまま、いきなり「評価してください」と言われる立場に置かれることがあります。

評価は「する側」にも訓練が必要

評価を受ける側のことは考えても、評価をする側の準備については後回しになりやすい。

中小企業の現場では特に、「管理者に昇格したのだから、評価ぐらいできるはず」という空気になりやすいかもしれません。でも、評価という行為は、それ自体が一つのスキルです。

部下の仕事ぶりを観察する習慣。記録をつけること。感情が揺れているときでも、できるだけ基準に沿って判断しようとする意識。こういったことは、「やりなさい」と言われてすぐにできるものではありません。

「部下をどう見るか」は、管理者としての核心的なスキルのひとつです。でも、それをどうやって身につけるかについては、意外と語られないまま現場に放り込まれることがあります。

なぜ、管理者単独での評価が難しくなるのか

特に製造業や建設業の現場では、数値で測れる実績が少ない場合があります。

営業職であれば売上や件数という指標があります。でも数値で測れる実績が見えづらい現場では、「丁寧に作業できているか」「安全に気を配れているか」「困っている後輩に自然に声をかけられているか」といった、行動の積み重ねを見ていく評価が中心になります。

こういった行動評価は、日頃の観察なしには成り立ちません。そして観察するためには、「何を見ればいいか」を知っている必要があります。

管理者がひとりで評価をしようとしたとき、「何を見ればいいかわからない」「どの基準で判断すればいいかわからない」という状態になるのは、ある意味で自然なことかもしれません。

「任せる」と「放置する」の間にあるもの

「管理者に評価を任せる」という方針自体は、間違っていません。

でも、「任せる」というのは「放置する」とは違います。最初から一人でできる人はほとんどいません。

ある会社では、最初のうちは上位者が管理者と一緒に同席して、二人で部下のレベルを判断する形を取りました。管理者は、上位者がどこを見て、何を基準に判断しているかを、隣で見ながら学んでいきます。

「なるほど、こういうふうに見ればいいんだな」という実感が積み重なっていくと、少しずつ自分ひとりでも判断できる場面が増えてきます。段階的に、権限を移していく形です。

こう聞くと非効率に思えるかもしれません。でも、この「一緒にやる期間」を省いてしまうと、後から「管理者によって評価の基準がバラバラ」「社員が評価結果に不満を持ち始めた」という問題になって返ってくることがあります。

「評価できる管理者」をどう育てるか

では、どのようにすれば管理者が評価を使いこなせるようになるのでしょうか。

ひとつは、評価の前段として「部下を観察する習慣」を身につけてもらうことです。

評価期間が終わってから「さあ、評価してください」と言われても、管理者の記憶の中には断片的な印象しか残っていないことがあります。日頃から、気になったことをメモする、気になる行動があったら記録しておくという習慣があると、評価の精度が変わってきます。

研修は「評価の仕方」だけでは足りない

管理者向けの研修を行う場合、評価シートの使い方を教えるだけでは不十分かもしれません。

「部下の行動をどう観察するか」「観察した内容をどう記録するか」「評価の場でどう伝えるか」という一連の流れを、具体的な事例を使いながら体験してもらうことが大切です。

特に導入初期は、「制度の使い方の説明」と「評価する側の心の準備」を分けて考えることが有効かもしれません。一度に全部を詰め込もうとせず、まずは観察と記録の習慣から始める、という順番が、結果的に定着しやすい場合があります。

「評価制度の研修」と「管理者としての観察力を育てる研修」は、内容も目的も異なります。この二つを混ぜてしまうと、どちらも中途半端になることがあります。

「一緒にやる期間」を設ける

最初から管理者に全部任せるのではなく、一定期間は上位者と一緒に評価を行う形を取ることも、ひとつの方法です。

同席評価の中で、「自分はこう感じたけど、あなたはどう見ましたか」という対話が生まれます。その対話の中で、管理者は少しずつ「評価の眼」を養っていきます。

この対話は、評価の精度を上げるだけでなく、管理者が「自分の判断を言語化する練習」をする場にもなります。「なんとなくこの人は4だと思う」を、「こういう場面でこういう行動をしていたから4と判断した」と言えるようになることが、評価者としての成長です。

制度の整備と、人の育成は、別のスピードで進む

人事制度を整えることと、その制度を使いこなせる管理者を育てることは、同じスピードでは進みません。

制度はある程度の時間をかければ作れます。でも、人が「できるようになる」には、経験と時間が必要です。

「制度はできた、でも使えていない」という状態は、制度が悪いのではなく、制度と人の育成のギャップが生じているサインかもしれません。

管理者が評価に戸惑っているとき、それは「この人には向いていない」ということではなく、「必要な経験と場がまだ足りていない」ということの方が多いように思います。

評価制度を導入した後で「うまく機能していないな」と感じることがあれば、管理者を責めるよりも先に、「管理者が評価できるようになるための環境が整っていたか」を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

仕組みを作ることと、仕組みを使える人を育てることの両方がそろって、はじめて制度が根づいていくのだと思います。

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