“優秀な人”が会社を去る理由、見逃していませんか? 評価と給与が連動した仕組みで、社員が定着・成長する組織へ。

「中途社員と既存社員の給与バランスが崩れている」ーどう対応すべきか?原因と対策

  
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「中途社員と既存社員の給与バランスが崩れている」ーどう対応すべきか?原因...

中途採用の競争が激しくなる中で人材を確保していくと、気づけば既存社員との給与バランスが大きく崩れてしまう―そんな状況に直面していることはないでしょうか?

この給与バランスがうまく取れないと、既存社員のやる気にも影響し、最悪の場合退職につながってしまうことも起こり得ます。

この記事では、なぜ給与バランスの問題が起きるのかを掘り下げ、経営者としてどんな影響を受けやすいのかを、具体的な事例とともに整理していきます。あわせて、適切なバランスを維持して、定着と健全な社内環境の両立をねらう実践策もまとめました。給与にまつわる悩みを抱えつつも前に進みたい方、ぜひ参考にしてください。

なぜ給与バランスは崩れてしまうのか?

実は、この問題はひとつの理由で起こるわけではなく、いくつもの要因が重なり合って生まれます。

たとえば、業界や地域の水準を十分に把握しないまま、その場しのぎで給与を決めてしまうケースは珍しくありません。さらに、昇給ルールが不明確だったり、役職や手当の基準があいまいであったりすると、社員の間に納得感が得られず、不公平感がじわじわと積み重なっていきます。

そうした状況が続けば、本人の努力や成果に見合わない差が広がり、「なぜ自分はこの給与なのか」という不満が強まります。その結果、組織全体の信頼や士気が揺らぎ、経営にとっても大きなリスクとなりかねません。

では、具体的にどんな理由で給与バランスが乱れてしまうのか。代表的な4つの理由を整理してみましょう。

理由①:中途採用の高待遇

採用の現場では「新しく入ってきた人の方が既存社員より高い給与をもらっている」――そんな状況、意外と多いのではないでしょうか。

人材不足の中で即戦力を確保するために、市場の相場に合わせて好条件を提示するのは当然の流れです。ただ、その一方で、長く会社を支えてきた社員の処遇が従来の枠組みに据え置かれたままでは、不公平感が強まってしまいます。

背景には、スピード感を重視して採用を決めたい経営側の思いがありますが、その結果として既存社員の士気が下がり、職場の雰囲気がギクシャクすることもあるのです。放置すれば、定着率の低下や早期離職といった形で跳ね返ってくるリスクもあります。

理由②:昇給ルールの不透明さ

「昇給ってどう決まるんですか?」―社員からそう聞かれて、すぐに答えられないということはないでしょうか。ルールがあいまいなままだと、どうしても不満や不信感につながってしまいます。

会社として評価基準や昇給のタイミング、基準額がはっきりしていなければ、どれだけ努力しても将来が見えず、「このまま頑張っても意味があるのか」と感じる社員が出てきます。

さらに部署ごと、役職ごとに判断基準がバラついていると、不公平感はいっそう強まります。もし評価自体が担当者の主観に大きく左右されているなら、納得感を得るのは難しいはずです。

社員が前を向いて働ける環境をつくるには、ルールを明確にし、定期的に見直すことが欠かせません。昇給の透明性を高めることが、結果的に組織の一体感を守る力になるのではないでしょうか。

理由③:役職と給与が連動していない

「リーダーになったのに給与が増えないのはなぜ?」―このように、役職と給与が連動していない状況は、組織に大きな歪みを生みやすいものです。ときには部下のほうが役職者より高い給与をもらっていたり、昇進しても待遇が据え置かれてしまったり。これでは本人も周囲も納得しにくいですよね。

背景にあるのは、明確が基準がないまま個別の交渉で、その都度給与を決めた結果、ズレが重なって収集がつかなくなってしまったことです。このような対応を続ければ、昇進そのものに魅力を感じなくなり、「役職につきたくない」という風潮さえ生まれかねません。

理由④:手当の基準があいまいになっている

「同じ仕事をしているのに、なぜ自分だけ手当がつかないのか?」――社員からそんな声が出たことはないでしょうか。役職手当や資格手当、残業手当などの基準がはっきりしていないと、どうしても給与バランスにズレが生まれてしまいますよね。

支給される人とされない人の差が不透明なまま放置されると、不満や疑問が積み重なり、やる気や信頼を損なう結果につながります。だからこそ、手当の基本的なルールは明文化し、社員にきちんと説明できる状態にしておくことが欠かせません。基準を見直し、制度として整えることで、組織全体の納得感を高めることができるのではないでしょうか。

このような原因から”給与バランスが崩れる”ということが起こり、さまざな問題が生じることになります。

給与バランスが崩れると何が起こるか

一度バランスが崩れると、経営にも現場にもさまざまな影響が出てきます。とくに怖いのは、社員同士の信頼関係が損なわれることや職場の雰囲気が悪化してしまうことではないでしょうか。給与格差に対する不満や噂が広まれば、部署ごとに壁ができ、組織が分断されやすくなります。

その結果、やる気や目標意識の低下、優秀な人材の流出といった課題が表面化し、経営層への不信や説明責任を問われる場面に発展することもあります。給与のバランス調整を後回しにしてしまえば、長期的には企業力そのものを削いでしまうリスクがあるのです。

社員のモチベーション低下

給与バランスが崩れると、社員のモチベーションは大きく低下します。努力や成果に見合った報酬が得られない状況が続けば、「どれだけ頑張っても報われない」という思いが広がり、日々の仕事に向かう姿勢が弱まってしまいます。

加えて、昇給や賞与のルールが不透明なままでは、「なぜあの人は上がったのか」「自分はどうすれば評価されるのか」といった疑問が膨らみ、不公平感や将来への不安が募ります。その結果、前向きに働く意欲を保つことが難しくなります。

こうした状態が続けば、会社に対する信頼や愛着は徐々に薄れ、特に優秀な人材ほど早く離れてしまうリスクが高まります。給与バランスの乱れは、モチベーションの低下、不公平感の拡大、そして人材流出へとつながる深刻な問題を引き起こすのです。

離職や採用難の加速

給与格差や不透明な待遇が続けば、社内だけでなく採用市場にも悪影響が及びます。正当な評価を受けていないと感じる社員は、「ここにいても先が見えない」と考え、より条件の良い環境を求めて転職を視野に入れるようになります。

一方で、新たに採用を試みても、求職者は給与や待遇の情報に非常に敏感です。社内に格差や不公平感が漂っている様子が伝われば、「安心して働ける会社ではない」と判断され、応募をためらう人が増えてしまいます。

結果として、既存社員の離職と新規採用の難航が同時に進み、組織の安定性そのものが揺らぎかねません。

経営者への不信感

社員が「なぜ自分はこの給与なのか」に納得できない状況が続けば、「経営はどんな基準で決めているのか」「本当に公正に判断しているのか」といった不信の声が広がります。

その影響で、経営側には説明責任が重くのしかかり、現場も対応に追われることになります。本来なら戦略や意思決定に注ぐべき時間やエネルギーが削られてしまい、組織運営そのものに支障をきたすリスクが高まるのです。

給与バランスのズレが起こる会社に共通している理由とは?

給与バランスが崩れてしまう会社には、どんな背景があるのでしょうか。実は「特別な事情があったから仕方がない」と思えるケースもありますが、よく見ていくと多くの企業に共通する理由が潜んでいます。

先代から続く「感覚的な給与決定」

先代の社長や主要な管理職が「この人にはこのくらいでいいだろう」と感覚的に給与を決めてきた流れを、そのまま踏襲している場合は注意が必要です。体系的な制度や明確な基準がなければ、どうしても担当者の裁量や人間関係に左右されやすく、個人ごとに差が生まれ、納得感にもばらつきが出てしまいます。

その結果、長い目で見ると不満が積み重なり、やがては企業文化や働き方そのものに悪影響を及ぼすことになりかねません。時代の変化や社員の多様な価値観に応えるためにも、制度を見直し、基準を明確にしていくことが欠かせないのではないでしょうか。

市場水準や相場の把握不足

自社の給与水準が世の中の相場とずれていないか、しっかり確認せずに運用を続けていると、気づかないうちに給与バランスが乱れてしまいます。労働市場は常に動いていて、業種や地域によっても相場は大きく違いますよね。そのため、定期的に調査や情報収集を怠ると、他社との格差が広がり、採用や定着に不利に働くリスクが高まります。

市場の動きを押さえながら自社の制度を見直していくことこそが、競争力のある給与体系を保つうえで欠かせない視点ではないでしょうか。

制度の形骸化・見直し不足

長年使われてきた給与制度も、時代や働き方の変化に目を向けず「とりあえず昔のまま」にしていると、制度自体が形骸化しやすくなります。ルールが存在していても、実態とかけ離れていたり、現場に十分周知されていなければ、社員の納得感は失われていきます。

こうした状況が積み重なることで、制度そのものへの信頼が薄れ、組織の空気にも影響を及ぼしかねません。

給与バランスを立て直すためのステップ

給与バランスを整えるには、現状を把握して課題を明確にすることが欠かせません。そのうえで、公平性や納得感のある仕組みをつくり、一貫した運用を続けていくことが求められます。昇給や賞与のルールを社員全員にわかる形にし、中途採用者との整合性も保つことがポイントになります。

では、具体的にどのような方法で給与バランスを整えていけばいいのか。代表的な3つのアプローチを確認してみましょう。

給与テーブルの整備と明文化

納得感のある給与バランス実現には、給与テーブルをきちんと整備し、明文化して全社員に共有することが不可欠です。等級や役職ごと、業務内容に応じた基準を明確化し、ひと目で分かる資料としてまとめておくと信頼度が上がります。

個々の事情に左右されない運用になれば、不公平感が減り、社員が将来のイメージを持って働きやすくなります。定期的な見直しも忘れず、変化に合わせて柔軟な調整を心がけましょう。

昇給・賞与ルールを明確にする

中小企業では「昇給や賞与は社長の判断で決まる」といった、あいまいな運用になっているケースが少なくありません。社員にとっては「なぜ昇給したのか」「なぜ賞与が減ったのか」が分からず、不満や不信感につながりやすいのです。

だからこそ、昇給や賞与のルールをあらかじめ明確に定め、社員に分かりやすく伝えることが大切です。たとえば、評価のタイミングや基準、昇給や賞与に反映される具体的なポイントを一覧にして共有しておくと、納得感が高まります。

また、中小企業では人事担当が専任でいない場合も多いため、複雑な仕組みを作る必要はありません。シンプルで誰が見ても理解できる形に整理することが重要です。「努力がきちんと報われる」というメッセージが伝わるだけで、社員の安心感ややる気は大きく変わってきます。

中途採用者も同じ枠組みで処遇する

中途採用では、即戦力を期待して高待遇で迎え入れることも珍しくありません。ただし、その処遇が既存社員と同じ基準や制度で評価されないまま続けば、不公平感や不信感につながってしまいます。

だからこそ、中途採用者も既存社員も同じ評価制度や給与テーブルに基づいて処遇される環境を整えることが重要です。採用時の特例が社内に伝わると、「なぜ自分は違うのか」という疑念が広がりやすいため、できる限り公平さを保つ姿勢が求められます。変化が生じる場面でも、情報を丁寧に共有し、組織内の信頼関係を損なわないように運用していくことが欠かせません。

まとめ|給与バランスの崩れを解消するには?

給与バランスの崩れを解消するためには、まず現状の課題を正しく把握し、判断基準を明確にした制度へと見直すことが第一歩です。

感覚的で属人的だった運用から、全員が納得できる明文化されたルールへと進化させていくことが求められます。内部の声や市場相場にも敏感になり、必要に応じて外部の専門家を活用する姿勢も大切です。透明性を高めることで社内の信頼関係も強くなり、安心して働ける職場づくりにつながります。短期的な改善にとどまらず、持続的な運用を心がけることで、業績向上や人材定着にも良い影響が期待できるでしょう。

もし、給与バランスの崩れを感じているようでしたら、まずは自社の給与ルールについて確認することからスタートしましょう。

現状把握を丁寧に行うことで、どこに不公平や課題があるのか明確になります。給与制度の改善はすぐに簡単に実行できるものではありませんが、第一歩を踏み出さないことには始まりません。今こそ一度、現状のルールを見直し、必要な対策へと一緒に行動していきましょう。

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