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後継社長として次の管理者をどう任命するか?

  
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後継社長として次の管理者をどう任命するか?

事業承継をして4年が経つある建設業の経営者のお話です。

現場でたたき上げの後継社長に交代した後も
現場は忙しく、売上も安定している。
外から見れば、順調にバトンは渡りつつあるように見えます。

それでも、この半年、毎回の打ち合わせの議題に必ず載っていたテーマがありました。

「次世代の管理者任命」
つまりは後継社長の右腕となる人材です。

今回の打ち合わせで、ついに一人の名前が出ました。

「……彼しか、いないんですよ」

その言葉には、確信と同じくらいの迷いが混じっていました。

能力もある。
実績もある。
周囲からの信頼も厚い。

条件で言えば、申し分ない人材です。

それでも、社長の決断は、ずっと止まっていました。

何が社長の決断を遅らせていたのか

話を丁寧にほどいていくと、社長の中で、いくつもの感情が絡み合っていることが見えてきました。

「幹部からも納得される人選です。でも、本人が本当にやりたいのかは分からない」
「もし断られたらどうしよう」
「他に候補者がいないんです」

一つひとつは、冷静な経営判断の言葉に聞こえます。
しかし、その奥にあるのは、もっと重たい現実でした。

この一手を誤れば、組織の流れが止まるかもしれない。
さらに言えば、彼自身のこの会社での将来にも影響を与えかねない。

その可能性を、誰よりも理解しているのが社長です。
だからこそ、決断は軽くならない。

後継社長は、常に二重の責任を背負っています。

自分の代で会社を前に進めなければならない責任。
そして、先代から託された会社を壊してはいけないという責任。

その重圧の中で発せられた「彼しかいない」という言葉。

そこには、

彼を失敗させたくない。
彼の人生を狂わせたくない。

そんな、経営者としての優しさと誠実さも感じられました。

制度では解決しきれない葛藤

人事制度の観点から見れば、これは

適性評価の問題
キャリア設計の不足
役割定義の曖昧さ

と整理できるかもしれません。

でも、現場で向き合っている社長の迷いは、そんな言葉では割り切れません。

優秀な社員を、自分の都合で引き上げていいのか。
その役割は、本当に彼を幸せにするのか。

強いリーダーほど、ここで躊躇します。

私は、そこで「任命の仕方」や「伝え方のテクニック」をすぐに出すことはしませんでした。

まずやったのは、線を引くことでした。

解決を急がず、あえて「線」を引く

なぜ、具体的な手法を伝えなかったかというと
今この社長に必要なのは、解決策ではないと感じたからです。

必要だったのは、頭の中で絡まり合っている「期待」を、きちんと分解することでした。

社長は無意識のうちに、
期待と責任と願望を、一つの塊にして抱えていました。

「彼ならできるはずだ」
「自分の右腕になってほしい」
「この停滞感を打破してほしい」

そうした思いが、整理されないまま重なっていたのです。

どれだけやる気のある若手でも、
際限のない責任は、挑戦ではなく恐怖になります。

役割が曖昧なまま渡された責任は、
信頼ではなく、重圧に変わってしまう。

だから私は、こう問いかけました。

どこまでが「管理者」の職務なのか。
どこからが「経営者」の責任なのか。

例えば。

現場の采配はどこまで任せるのか。
最終的な数字責任は誰が持つのか。
トラブルが起きたとき、前に立つのは誰か。
改善の裁量は、どこまで与えるのか。

つまり、「任せる」という言葉の中身を、具体的に線引きしていく作業です。

この作業をしていくと、意外なことが起こります。

社長自身が、自分の期待を正確に言語化できていなかった、という事実に気づくのです。

期待はある。
信頼もある。
けれど、どこまでを求めているのかは曖昧だった。

だからこそ、期待や責任を言語化していくことには、大きな意味があります。

役割の輪郭が見えた瞬間、
任命は「覚悟を迫る行為」から「対話の入り口」に変わります。

制度や仕組みは、その後でも整えられます。

まず整えるべきなのは、
社長の頭の中にある「期待の構造」なのです。

言葉にできた時点で、もう半分は解決している

言葉にできた時点で、問題は整理の第一歩を踏み出しています。

経営者がふと漏らす「困ったな」「どうしよう」という言葉。
それは弱さではなく、判断の重さを真剣に受け止めている証拠です。

特に人事の決断は、数字以上に人の人生に関わります。
だからこそ、簡単には決められない。

頭の中で考え続けていると、
期待も責任も不安も、すべてが一つに混ざってしまいます。

その状態では、決断は重くなる一方です。

まず必要なのは、正解を出すことではありません。
今、自分が何を期待しているのか。
どこまでを任せ、どこからを自分が持つのか。

それを言葉にして切り分けることです。

実際、書き出してみると、

「そこまで求めていなかった」
「これは自分の責任だ」
「ここはまだ任せなくていい」

といった整理が進みます。

任命とは、覚悟の問題ではなく、設計の問題です。

役割の範囲を明確にし、責任の所在をはっきりさせる。
その上で本人と対話をする。

そこまで整えば、決断は感情論ではなくなります。

もし今、管理者任命で迷っているのであれば、
まずはあなたの頭の中にある「管理者像」を具体的に書き出してみてください。

求める成果は何か。
どこまでの裁量を渡すのか。
失敗したとき、誰が最終責任を持つのか。

そこが整理できれば、次の一手は見えてきます。

人事の判断は、孤独になりがちです。
しかし、整理のプロセスは一人で抱える必要はありません。

判断を急ぐ前に、構造を整える。
そこから一緒に始めていきましょう。

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