後継者として事業を引き継いだものの、「今は自分の右腕となる社員がおらず、自分の方針を組織の末端まで共有することが難しい。このままの状態が続くと、後継者として目指す未来目標を達成することが難しいため、自分の右腕となる幹部社員を育成して現場社員まで方針を伝えて欲しい・・・」

このように悩んでいる後継社長の方は多いのではないでしょうか?
今回は、そんな方に向けてぜひ取り組んで欲しいことをお伝えしていきます。

本記事の内容

●幹部社員育成の第一歩は後継者としての想い・考えを伝えることから

●幹部社員を育成して会社をもっと成長させていく方法

この記事を書いている私は、中小企業の後継者としての経験に加え中小企業支援をして20年。
現在は、事業を引き継いだ後継者の右腕育成の支援を行っています。

幹部社員育成の第一歩は後継者としての想い・方針を伝えることから

事業を引き継いだ後継者が自らの右腕となる幹部社員を育てていくためには、まず後継者として会社をどのようにしていきたいかという想いや方針をしっかりと伝えていくことが重要です。

なぜなら、社員から見て後継者がどこに向かっているのか、どういう方針で事業を展開していくのかというようなことが分からないため、自分たちの活動がどこにつながっているのか、正しい方向に向かっているのか迷ってしまっていることが多いからなんです。

そうすると、日々業務で忙しいことは忙しいけど、果たしてこれを続けていて会社は良くなっていくのか、自分たちの生活も向上していくのか・・・というような気持ちを持つようになる社員も生まれてしまいかねません。ましては、将来を担う幹部社員を育成することも難しくなるでしょう。

ある会社の後継者にこういうお話をしたところ「うちの会社はしっかりと方針を伝えていますよ」と答えました。
そこで、どのように伝えているかを聞いてみると・・・

経営計画書を作成して、毎年度はじめに発表しているということでした。

さらに詳しく話を聞いてみると・・・中長期計画と単年度計画を作成し、社員に資料を配付し説明しているとのこと。

もちろんこれは間違いではないと思いますが、よく起こることは経営者視点の財務的な指標が中心となっていて、社員からするといまいち自分事にならないということなんです。「来年は売上高10億円、営業利益率10%を目標にする」と言われても、社員は具体的に何をすればいいか分からないのではないでしょうか?

だからこそ、後継者としてなぜその目標を目指すのか、その先に会社はどのようになっていくのか?その目標を達成するために社員には何をして欲しいのか、期待するのか?ということをしっかりと説明することが必要です。

そこで有効なものが「経営方針書」です。財務的な計画に加えて、後継者からのメッセージ、経営理念や行動指針、3・5年経営ビジョン、部門・職種別の活動指針などを網羅したものです。
この「経営方針書」を作成して発表することで、財務的な目標達成の先に会社としてどのような理想的な未来があるのか、目標達成のために自部門・チームは何をする必要があるのかということが明確になります。

これを毎年度更新して発表すること、それ自体が人材育成につながり将来の幹部社員育成にもつながってくるはずです。

40歳目前で事業を引き継いだある製造業の後継者は、この「経営方針書」を活用し自らの想いや方針を伝える場を作りました。すると、「それまでの社員からの自分に対する態度や対応が代わり、だんだんと後継者である自分に目が向いてきた」というように変わってきたといいます。

想いや方針をしっかりと伝えていると思っていても、意外と社員はそう感じていないことも多いです。
ぜひ、今一度後継者としての想い・方針を伝える場を作ってみてはいかがでしょうか?

幹部社員を育成して会社をもっと成長させていく方法

後継者の右腕となる幹部社員が育ってくれば、組織全体の成長につながっていくはずです。

幹部社員が後継者の方針を現場の社員に伝える役目を自然と担い、末端の社員を成長させてくれるからです。もちろん、これを実現するには経営側での仕組み作りも必要にはなってきますが、キーマンは経営者と現場をつなぐ幹部社員たちです。

「経営方針書」で記載されている全社目標を、幹部社員が管轄している部門やチームに落とし込んで、それらの達成へ向けて幹部社員がフォローアップしていけるようにすることも一つの方法です。

例えばある会社では、部門を統括する幹部社員が部門目標を設定した上で、それらを個人レベルまで数値目標として落とし込んで管理しています。ポイントは「数値で管理していく」ということです。数値で管理すれば、取り組む側も何をすればよいか明確になりますし、管理する側も取り組みが十分か不十分か明確に判断でき改善もしやすくなります。そして、部下の目標達成を後押しするのが幹部社員であるという認識のもと、日々コミュニケーションを図り定期的に個別面談等を実施しています。

このような取り組みをすることで、後継者としての方針が幹部社員から現場に伝わっていきますし、末端の社員も何をすればよいか明確になり、また上司からのフォローアップもしてもらいながら達成に向けて取り組んでいけることになります。さらに、幹部社員にとっても部下の目標達成の手助けをする過程それ自体が人材育成の機会となります。

こういう仕組みを後継者として整えていけば、自らの右腕となる幹部社員育成にもつながっていきますし、それが組織全体に広がっていき会社の成長も実現できるはずです。

私が後継者だった時を振り返ると、このような仕組み自体がなく、意図した人材育成を図ってはいなかったです。人材育成は、現場の社員任せでその社員の経験や力量によって、属人的なOJTをしていました。

後継者として事業を引継ぎ、目指すべき未来へ向けて進んでいくためには幹部社員の協力は不可欠です。その幹部社員育成へ向けて、意図した人材育成をしていくとよいのではないでしょうか?